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クルーズ船専用岸壁の完成予想パース
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所

【港湾概要】
【港湾区域】 1,493ha
【臨港地区】 74ha
【総取扱貨物量】 77万t(2016年速報値)
【コンテナ取扱貨物量】 5万1,839TEU(2016年速報値)
【クルーズ船寄港】 130回(2017年)
【港湾管理者】 宮古島市
 沖縄本島から南西へ約300km。宮古島にある平良港は、宮古島を中心とする宮古圏域(伊良部島(いらぶじま)、下地島(しもじじま)、池間島(いけまじま)、来間島(くりまじま)、大神島(おおがみじま)、多良間島(たらまじま)、水納島(みんなじま))を背後圏に持つ重要港湾だ。沖縄本島や石垣島、九州、台湾・中国との定期航路、多良間島との離島フェリーが就航。宮古圏域で消費される生活物資の受け入れ・積み替え拠点や離島住民の発着拠点として重要な役割を担ってきた。近年は船舶の大型化に対応した施設整備や防災対策が進行。急増するクルーズ船の寄港を受け入れるための施設整備も具体化している。
 
船舶大型化、リゾート、防災―新たな時代の要請に対応
 
戦後復興で整備が本格化
 古くは「漲水(はりみず)港」と呼ばれた平良港。1390年頃から沖縄本島の中山王朝との航路が開かれ、王府首里への貢物船が利用していたとされる。明治時代に初めて汽船が入港。大正時代には商人組合によって突堤や荷揚場、道路が造成された。
 本格的な港湾整備は戦後に始まった。終戦直後、当時の平良市(現宮古島市)の石原雅太郎市長は復興促進のため、電気・水道と共に市の三大事業として港湾築造を位置付けた。1953年には1,000t級船舶の接岸が可能な桟橋が完成。さらに1958年には琉球政府から重要港湾に指定され、1966年までに防波堤築造や浚渫が完了。2,000t級船舶の接岸も可能になった。
 1972年に沖縄が本土に復帰すると、平良港は宮古圏域の拠点港として平良市を管理者とする重要港湾に指定された。これに伴い、1972年度には港湾整備5カ年計画に基づく整備事業がスタート。航路泊地(水深6m、7.5m)や物揚場などが整備され、港湾機能の向上が図られた。
 1974年には平良港港湾計画が新たに策定され、漲水地区に防波堤と3つのふ頭が計画された。これに基づき、1976年には5,000t級の大型船舶が利用可能な本格的ふ頭として第3ふ頭が完成。1982年には、ふ頭の機能分担、避泊機能の充実、海洋性レクリエーション需要への対応、都市機能用地・都市再開発用地の計画を盛り込んだ港湾計画の改定が行われ、1984年に危険物の取り扱いを中心とする第1ふ頭、1985年には1万t級のバースを含む物流の中心となる第2ふ頭が概成した。引き続き第7次港湾整備5カ年計画(1986〜1990年度)に基づき、平良港の第2期整備計画ともいえる下崎地区の整備が始まり、下崎北防波堤と都市機能用地整備が進められた。漲水地区では、遊漁船のための下里船だまり、離島定期船のための第4ふ頭の整備が行われた。
 1990年代に入ると、新たな時代の要請に応える港湾整備も始まった。その一つが、沖縄県のリゾート計画に対応した海洋性レクリエーション基地の形成(コースタルリゾート計画)だ。1990年には21世紀の平良港を見据えた港湾計画の改定が行われ、トゥリバー地区で1993年にコースタルリゾート計画が着工。1997年度には親水性防波堤(340m)が完成した。1998年度にはマリーナのビジターバースが1基設置され、マリーナが一部供用を開始した。
 平良港は宮古圏域の人々の生活を支える物流・人流の拠点となっているため、物流面では船舶の大型化や貨物の増大に加え、大規模災害に備える防災機能の強化も必要だ。そうした情勢への対処として2000年に港湾計画が改定され、下崎地区の岸壁(水深10m)1バースが2008年に供用を開始した。さらに安定的な物流機能の確保、公共貨物取扱機能の拡充、港湾機能の強化、大規模地震対策施設の適正配置、危険物取扱施設の適正配置という基本方針の下に2008年11月に港湾計画が改定された。
 
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
 
中核の漲水地区で再編進む
 平良港の中でも、宮古島市全体の生活物資を取り扱う物流拠点、また多良間島へのフェリーの発着基地として離島住民の生活を支える拠点の役割を果たしているのが漲水地区だ。同地区では2012年度から「漲水地区複合一貫輸送ターミナル改良事業」が進められている。
 事業の目的は、整備から約30年が経過した施設の老朽化対策と、船舶の大型化に対応した水域と岸壁、ふ頭用地の確保、大地震発生時にも緊急物資輸送や復旧への迅速な対応が可能な耐震強化岸壁の確保、クルーズ船の受け入れ環境改善などだ。事業期間は2024年度まで。168億円の事業費をかけ、水深10mと7.5mの岸壁、港湾施設用地、臨港道路、緑地、水深10mの航路と水深10mの航路・泊地の整備、西・南防波堤の延伸・撤去などを実施する。
 このうち港湾施設用地と臨港道路、緑地の埋め立てが完了。岸壁は計画延長440mのうち295mが2017年12月に暫定供用された。これにより、冬季の季節風に対する操船の安全性が高まり、定期船の就航率が向上。広い用地が確保されたことで荷さばき作業の効率化も期待できる。大地震への備えも充実し、地域の防災力が高まった。RORO船が接岸する合間には、市街地に近い漲水地区に5万t級のクルーズ船を着岸させることも可能になった。
 
平良港の整備プロジェクト
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
 
安全性向上、就航率改善、荷役作業も効率化
 
誘客促進へ官民連携活発
 平良港で今、大きな注目を集めているのが、「平良港国際クルーズ拠点整備事業」だ。平良港は1,000km圏内に上海やアモイ、1,500km圏内に香港や広州があるなど、ショートクルーズに適した立地条件を備える。2015年7月、クルーズ船の定期寄港が10年ぶりに再開され、寄港回数は2016年に86回、2017年に130回を記録。2018年は154回が予定されるなど急速に伸びている。2017年には全国の港のクルーズ船寄港回数上位10港のうちの6位にランクインした。
 ただ、受け入れ環境は十分とは言い難いのが現状だ。現在は専用岸壁が無く、クルーズ船は暫定的に下崎地区の貨物用岸壁(水深10m、延長270m)に接岸する。ここは普段、砂や砂利、鉄くずなどを扱う岸壁で、豪華な客船が停泊する「海の玄関口」にふさわしい環境とはいえない。しかも岸壁の規模から接岸可能なのは最大でも5万t級まで。これを超すクルーズ船は沖の防波堤に囲まれた泊地に停泊し、乗客はテンダーボートと呼ばれる120人乗りの小型ボートに乗り換えて漲水地区に上陸する。2,000人の乗下船には計5時間ほどかかり、観光の時間が大きく削られると乗客から不満が出ることもあるという。
 政府は2020年に訪日クルーズ旅客500万人の目標を掲げる。この目標を達成するため政府は、国と港湾管理者による受け入れ環境整備と、クルーズ船社による旅客ターミナルビルなどに対する投資を組み合わせることによって短期間で効果的に国際クルーズ拠点を形成する制度を創設。港湾管理者とクルーズ船社を対象に、「官民連携による国際クルーズ拠点形成計画書」を募集した。宮古島市は、世界最大のクルーズ船運航会社、カーニバルコーポレーション&PLCと連携してこれに応募。平良港は2017年1月、横浜、清水、佐世保、八代、本部の5港と共に「官民連携による国際クルーズ拠点」を形成する港湾に選定され、7月には国土交通大臣から「国際旅客船拠点形成港湾」にも指定された。
 これを受け、14万t級のクルーズ船が接岸可能な岸壁と泊地、臨港道路を国が整備。CIQ(税関・出入国管理・検疫)を行う旅客ターミナルビルをカーニバル社が整備・運営する「平良港国際クルーズ拠点整備事業」が始まり、9月には起工式が行われた。供用開始目標は2020年4月。計画では、寄港回数を2020年に250回、2026年に310回とする目標を掲げている。
 宮古島では、島を挙げてクルーズ船の誘致活動に取り組んでいるのも大きな特色だ。2008年には官民の関係機関で「宮古島クルーズ客船誘致連絡協議会」を設置。2016年には「宮古島クルーズ客船誘致・受入環境整備連絡協議会」に改称して活動を続ける。市や沖縄総合事務局平良港湾事務所をはじめ観光協会や商工会議所、タクシーやバス会社の団体などが参加。会合を頻繁に開いてさまざまな課題を話し合い、解決策を素早く実行に移す。「船社からも、レスポンスが早いと協議会の活動が非常に高く評価されている」(平良港湾事務所)という。
 
漲水地区複合一貫輸送ターミナルの完成予想

提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
 
クルーズ船の寄港急増、受け入れ体制整備へ注力
 
空と海つなぐ観光ルートに期待
 2015年1月、宮古島と隣の伊良部島を結ぶ「伊良部大橋」が開通した。延長3,540m。無料で渡れる道路橋としては国内最長で、エメラルドグリーンの海に大きな弧を描く橋は、新たな観光資源として人気が急上昇している。平良港では2017年4月、本格的なマリンリゾートの拠点整備が計画されているトゥリバー地区で三菱地所が用地を取得。2020年代初頭の開業を目指してホテルを建設する構想を明らかにした。同社は伊良部大橋で陸続きとなった下地島の下地島空港に旅客ターミナルを整備し、国際・国内線を就航させる事業も実施中で、2019年3月の開業を予定している。
 豊富な観光資源を背景に、平良港を中心として空と海をつなぐ新たな観光ルートの誕生への期待も高まっている。
 
下崎地区の岸壁に接岸したクルーズ船「スーパースターアクエリアス」
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
沖に停泊したクルーズ船「サファイアプリンセス」からのテンダーボートによる乗下船
提供:沖縄総合事務局平良港湾事務所
 
観光資源として人気が高まる伊良部大橋
 

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