海洋土木技術
①防波堤
防波堤は、外洋からの波浪を防ぎ港湾内の水域を静穏に保つため、また津波の被害から陸域を守るために海中に設置された構造物で、代表的な外郭施設です。その構造形式は、傾斜堤・直立堤・混成堤・消波ブロック被覆堤などに大別されます。
近年は堤体にケーソンを採用した防波堤が一般的になっており、より機能性や安全性を高めるためにマルチセルラーケーソン・直立消波ケーソン・曲面スリットケーソン・二重円筒ケーソン・上部斜面ケーソン・台形ケーソン・斜底面ケーソン・透過ケーソン、ハイブリッド長大ケーソンなどの新たなケーソン構造が開発されています。
施工の流れ
一般的な「消波ブロック被覆堤」の断面図と施工の流れを以下に示します。
消波ブロック被覆堤
施工の流れ(消波ブロック被覆堤)
主な工種の紹介
以下に「消波ブロック被覆堤」における主な工種について紹介します。
・基礎捨石投入
基礎捨石は、均し作業を容易に行えるように、潜水士の投入指示に従ってガット船により投入します。
捨石投入(ガット船)
・基礎捨石均し
基礎捨石の投入完了後は、潜水士により荒均し・本均しを行います。
近年は、大規模あるいは大水深の捨石均しに対して、重錘による垂直転圧方式や水中均し機による水平力回転方式も採用されています。
捨石均し(水中均し機)
・ケーソン製作・進水
ケーソンは、製作ヤードにて鉄筋組立・型枠組立・コンクリート打設・養生・型枠組外しの一連作業をロット毎に繰り返して製作されます。
ヤードにて製作されたケーソンの進水方式には、ドライドック式・斜路式、フローティングドック式(FD式)・起重機船式があります。近年は、ケーソン進水時の安全性や作業効率を高めた技術として、着底型進水台船式(DCL式)、造船所用の船舶上下架設備を利用したシンクロリフト式、重量物運搬用のキャスターと着底式親水台船とを組み合わせた工法などが開発されています。
ケーソン進水(FD式)
・ケーソン据付
ケーソン据付方法は、ウインチ方式と吊降し方式に大別されます。
ウインチ方式は、ケーソンを浮かべて曳航し、ウインチにより据付位置へ引き込む方式です。同方式では、注排水および引寄せウインチの遠隔監視・操作、更にケーソン動態の遠隔監視を可能にした「ケーソン無人据付システム」も開発・実用化されています。
一方、吊降し方式は、起重機船によりケーソンを吊り上げて曳航し、据付位置へ吊り降ろす方式です。
ケーソン据付(吊降し方式)
・中詰砂投入
ケーソン据付後の安定を保つため、ケーソン内部に砂や割石などの中詰材をガット船にて投入します。投入にあたっては、ケーソン各室に段差が生じないように均等に投入します。なお、大量の中詰材を投入する場合には、リクレーマ船やベルトコンベア台船を用いることもあります。
・上部コンクリート打設
防波堤の上部コンクリートは、構造上本体と一体となって外力に抵抗することを目的として施工します。海上打設の場合には、コンクリートミキサー船にて打設します。
上部コンクリート打設
(コンクリートミキサー船)
・根固ブロック据付
堤体基部付近は、入射波や反射波の噴流により基礎捨石の洗掘や吸い出しが起こり易いため、起重機船にて堤体の根元に根固ブロックを設置し、堤体根元の基礎捨石を保護します。
・被覆石投入
堤体の基礎である捨石の飛散や流出などを防ぐため、1個当たり1トン程度の被覆石をガット船により投入し、基礎捨石を保護します。
・被覆石均し
被覆石の投入完了後は、潜水士船のウインチを用いて潜水士により均しを行います。
・消波ブロック据付
堤体の安定性向上、前面水域の静穏度確保、堤内への越波減少を図るため、起重機船により消波ブロックを据え付けます。
消波ブロックの種類には、自然共生型などの様々な消波ブロックも開発・採用されています。