21世紀に伝えたい『港湾遺産』

[No.13] 広島・厳島神社 資料編

本社本殿

 国宝となる本社は、桁行正面8間、背面9間、梁間4間あり、1重両流れ造り。神社建築を特徴づける千木と鰹木をもたず、平安貴族の間に流行した寝殿造りの様式を伝える桧皮葺の屋根に瓦を載せた化粧棟のスタイルをもつ。この本社を中心にさまざまな付属施設があり、300m以上ある回廊で結ばれている。

 厳島にある本宮(内宮)37棟、対岸にある外宮19棟の建造物のうち、国宝に指定されているのは6棟、国の重要文化財に指定されているものは11棟3基。一つの神社でこれだけの貴重な構造物をもつのは、厳島神社だけであり、その文化遺産としての価値が高いことがわかる。

大鳥居の西側主柱基部

大鳥居

 土木構造物という視点から見ると、国の重要文化財である大鳥居は厳島神社のシンボル的な施設だ。4脚造りで楠の自然木を使ってつくられている。近くに寄ると意外にゴツゴツとしていて木の質感が伝わる。大きさをもう少し詳しく見ると高さ約16m、主柱の高さ約13.4m、主柱の周り9.9m、棟の長さ23.3m。これだけの大きさの鳥居を、本殿拝殿から約200m離れた洲の上に自らの重さを利用して自立させている。

基礎構造

 砂地の地盤に建設されるだけに、その基礎構造は技術的にも高いレベルが要求される。

 大鳥居を例に基礎構造をみると、明治8年(1875)の造営の記録に「千本杭タタラ潟より切出す」とあり、杭が打設されていたことがわかる。昭和20年代の調査で明治時代に補強されたコンクリート基礎と杭打ち地形が確認された。コンクリートは補強に使ったものである。

 コンクリートの下にあったのは松の基礎杭(千本杭)であった。袖柱下の千本杭は、袖柱1本について30本ほどの数に達する。長さはわからないが杭の間は2〜3寸(6〜9cm)。杭の腐食した部分を除去し、杭の間を厚さ1尺5寸(45cm)ほどのコンクリートで固め、その上に厚さ8寸(24cm)の板石を敷き並べて基礎としたのである。こうした技術があって初めて、海中の軟弱地盤での自立が可能になったといえる。