東日本大震災 復旧・復興だより

東日本大震災 復旧・復興だより

宮古港出崎防波堤ケーソン上部工工事の様子

①八戸港

 被災した八太郎北防波堤(災害復旧)の復旧工事が進む。一昨年11月からケーソン製作をむつ小川原港ケーソンヤードで開始し、同時に倒壊したケーソン撤去を進めた。昨年2月16日から製作済みケーソンを順次むつ小川原港から八戸港まで回航し、4月6日には復旧ケーソンの第1号函を据え付けている。12月11日現在、北防波堤中央部の新規据付ケーソン41函全ての据え付けを10月11日に完了。一方、北防波堤ハネ部については新規据付ケーソン34函中8函の据え付けを完了し、残り26函となっている。

②久慈港

 湾口防波堤は一昨年11月から南堤の手戻り工事に着手済み。災害復旧は、北堤の消波工事を一昨年末から開始し、現在は半崎地区波除堤、湾口地区防波堤の築造工事など全ての工事に着手している。昨年9月9日より大型起重機船(2,000トン)による湾口防波堤(北堤)セルラーブロック据え付けを開始し、現在までに6函全ての据え付けを完了している。

③宮古港

 災害復旧は、竜神崎地区、鍬ヶ崎地区、出崎地区、藤原地区、神林地区における災害事業25施設全ての工事を発注済み。出崎地区の防波堤は、藤原地区の岸壁背後で製作していたケーソン18函が昨年3月に完成、7月下旬からケーソン据え付け作業を開始し8月中旬までに18函全ての据え付けを完了している。竜神崎地区の防波堤は、手戻箇所の基礎工事を3月に完了。FDで製作したケーソンは8月下旬に進水仮置し、9月下旬からケーソン据え付け作業を開始し10月中旬までに全9函のうち4函の据え付けを完了している。残り5函のケーソンはFDで製作中。神林地区の防波堤は、12月中に全38函のうち13函のケーソン据え付けを予定している。残り25函のケーソンは藤原地区の岸壁背後で製作中。藤原地区の防波堤は、上部のかさ上げ工事などを進めており、防波堤のケーソン2函はFDで製作中。鍬ヶ崎地区・出崎地区、藤原地区の岸壁は、利用者と調整を図りながらエプロン舗装等の復旧工事を進めている。

④釜石港

 東北地方整備局、岩手県、釜石市は昨年2月26日、釜石港湾口防波堤災害復旧工事の着工式を岩手県釜石港内で開催した。2月から湾口防波堤南堤のケーソン撤去を開始し、2015年度までの5年間で完全復旧を図る。災害復旧工事は、工区を南堤と北堤(開口部含む)の二つに分けて進める。南堤はケーソンの製作(9函)を2012、2013年度の2カ年で行い、2012〜2014年度で据え付け作業を完成させる予定。現在、延長50mのハイブリッドケーソン4函の製作、破損したケーソンの撤去を実施している。北堤工区は、約4年間でケーソン37函を製作。2015年度までに工事を終える。現在、破損したケーソンの撤去、RCケーソンの製作、基礎捨石の投入、作業基地整備を実施している。湾口防波堤の復旧費用は約490億円を見込む。

⑤大船渡港

 大船渡港湾口地区防波堤の本体工事1件、築造工事1件を発注済み。地元との調整も終了し、工事を再開。FDで防波堤ケーソンを製作中で、ケーソン1、2函目の進水を昨年11月に完了している。また、野々田地区岸壁(ー13m)及び(ー7.5m)の災害復旧は昨年6月、永浜地区岸壁(ー13m)は7月に工事を発注済み。湾口防波堤の復旧費用は約200億円を見込む。

⑥石巻港

 雲雀野地区航路・泊地浚渫工事は昨年度中に完了し、今年度からは防波堤(南)の上部工及び消波工のかさ上げ等の災害復旧に本格的に取り組んでいる。また、同地区の岸壁(ー13m)2バースについてもかさ上げ及びエプロン舗装等の復旧工事を行っており、宮城県が背後の野積場の舗装等を進めている。

⑦仙台塩釜港

 仙台港区の向洋地区高砂2号岸壁(ー14m)の災害復旧工事は一昨年夏から工事着手し、昨年1月22日には震災後に初めて北米航路のコンテナ船が寄港した。当該岸壁と隣接する高砂1号岸壁(ー12m)では全ての災害復旧工事が完了し供用されている。また、高砂2号岸壁に隣接の取付護岸部の災害復旧工事を施工中である。
 中野地区岸壁(ー12m)及び(ー10m)と高松ふ頭岸壁(ー12m)は舗装工事などがほぼ完了し、中野地区岸壁(ー7.5m)の舗装工事を実施している。外港地区では、沖防波堤及び南防波堤の上部かさ上げ工事やC防波堤の復旧工事などが完了し、宮城県が新北防波堤や中野・向洋地区の野積場舗装等の復旧工事、さらには塩釜港区の各施設の復旧工事を進めている。

⑧相馬港

 本港地区防波堤(沖)については、相馬港(FD、陸上)及び小名浜港(FD)においてケーソンを製作中(製作函数:全93函)であり、現在まで48函のケーソンが完成した。沖防波堤復旧の海上工事は、全区間において築造工事を実施しており、被災した水没ケーソンの撤去や再利用ケーソンの浮上、基礎工事などを実施している。昨年12月中旬から陸上製作ケーソン24函の吊り卸し、仮置きを行い、本年度中にFD製作済ケーソンと合わせ21函の据え付けを行う予定である。
 また、そのほかの復旧事業としては、防波堤(北)上部工かさ上、泊地(ー14m)グラブ浚渫を本年度内に実施、完了する見込みとなっている。

⑨小名浜港

 小名浜港の係留施設は、港湾利用者等との調整を図りつつ、3号ふ頭地区、4号ふ頭地区、5・6号ふ頭地区、7号ふ頭地区、藤原ふ頭地区及び大剣ふ頭地区の主要ふ頭の全てで岸壁の復旧を進めている。震災後の著しい滞船の対応として施設利用者から早期に再開を要請されている3号ふ頭3号岸壁は昨年8月に、大剣ふ頭4号岸壁は11月に施設利用を再開した。また、外郭施設については防波堤(沖)及び西防波堤(第二)の上部工かさ上げなどを進めている。

⑩茨城港

 日立港区は、一部復旧し供用している第5ふ頭の本格復旧を実施中。その他の施設を含め、本年度末までに復旧見込み。
 常陸那珂港区は、応急復旧により一昨年度から北埠頭外貿地区における建設機械輸出や内航地区の苫小牧、北九州定期RORO航路が再開。外貿地区A岸壁やガントリークレーンの復旧により外貿定期コンテナ航路が再開した(昨年5月)。ヤードの大半やその他の岸壁について、本年度中を目標に順次本格復旧を進める。

⑪鹿島港

 土砂の堆積した航路のうち、外港航路、中央航路、南航路の浚渫が完了。公共岸壁は全てが復旧し供用中。背後のヤードは本格復旧を進めている。昨年3月中旬には北公共埠頭のガントリークレーンが稼働した。

(12月末現在の工事状況)

仙台塩釜港石巻港区雲雀野地区復旧工事

中央ふ頭1号岸壁と南防波堤が完成

 東北地方整備局塩釜港湾・空港整備事務所は、仙台塩釜港石巻港区雲雀野地区の災害復旧工事のうち、雲雀野中央ふ頭(ー13m)の1号岸壁と、港内の静隠度を確保するために沖合約1キロのところにある南防波堤の復旧を2012年11月中旬までに完成させた。

復旧工事が完了した南防波堤

 石巻港区雲雀野地区は、東日本大震災で地盤が大きく沈下したため、東北地方整備局が一昨年9月から港湾施設の災害復旧工事を進めていた。南防波堤(延長1,820m)は、1,780m(ケーソン105函分)が災害査定の対象となり、平均で1.7mのかさ上げ工事を実施した。周囲には消波ブロックは20〜32トン型3,379個を製作し、据え付けた。南防波堤の復旧により港内の静隠度の向上が図られたほか、岸壁のかさ上げにより侵水のリスクが低下し、船舶が安全に係留・荷役することが可能となった。
 一方、雲雀野中央ふ頭の1号岸壁(延長260m)は、沖側の1号岸壁が大きく沈下しため、平均かさ上げ高を約1.3mとして工事を進めた。両工事とも台風や低気圧による影響、セメント、砂、砂利などの資材不足による工程の遅れが懸念されたが、ミキサー船を増やすなどの対応により、予定通り昨年10月上旬に1号岸壁、同11月上旬に南防波堤のかさ上げを完成。また、消波ブロックの据え付けも終えた。
 現在、来年3月の完成を目指し残る2号岸壁のかさ上げ作業を急ピッチで進めている。

現場ルポ

宮古港災害復旧工事

被災施設の復旧工事を同時進行させ、早期の完全復旧を目指す

宮古港鍬ヶ崎地区出崎防波堤

 2011年3月11日の東日本大震災で被災した宮古港(岩手県)の災害復旧工事が本格化してきた。港内では多くの作業船が往来し、港湾利用や水産活動などの完全復活に向けて、港湾工事が急ピッチで進められている。国土交通省東北地方整備局釜石港湾事務所は、計画していた復旧工事10件をすべて発注し、防波堤や岸壁などの工事を同時並行で実施中だ。岩手県内最大級の漁業基地である同港の復旧工事現場を訪ねた。

(日刊建設工業新聞社)

甚大な被害を受けた漁業と観光の町を復活

竜神崎、出崎の各防波堤に大きな被害が
 宮古港は陸中海岸国立公園のほぼ中央に位置し、リアス式海岸特有の地形を生かした天然の良港だ。深く入り組んだ港内には、水産施設をはじめ、木材・木製品の製造拠点、観光・交流施設などがある。このうち、水産業は沖合に豊かな漁場があり、年間約4万トンの水揚量を誇り、同港の取扱貨物量の4分の1を占める。
 東日本大震災は、この漁業の町にも大きな被害をもたらした。気象庁の発表資料によると、宮古港は震度5強の揺れがあり、津波の高さは7.3m(代表的地点の数値)あったという。建物などが侵水した深さを示す「侵水深」は8.7〜10.4m、津波が斜面などを駆け上がった高さを示す「遡上高」は7.3〜16.7mにも及んだ。また、岸壁など港湾施設全体が50〜100cm程度沈下していることも分かった。
 強い揺れと大津波、さらには地盤沈下の影響で、港湾施設は甚大な被害を受けた。特に被害が大きかったのは竜神崎、鍬ヶ崎、藤原、神林の5地区。このうち、竜神崎地区は、港口に近い竜神崎防波堤のケーソン29函のうち、中央部を残し、両端の11函が倒壊した。
 漁船が停泊する鍬ヶ崎地区を守る出崎防波堤は、ハネ部(153m)と標準部(225m)で構成されるが、標準部のケーソンすべてが倒壊。ハネ部のケーソンも2函が倒壊、3函が上部飛散した。基礎マウンドの一部も流失した。また、各地区の岸壁や防波護岸、突堤なども地盤沈下や破損被害を軒並み受けたほか、藤原ふ頭にある上屋施設も激しく損傷した。

竜神崎防波堤は2012年度内に全ケーソン据付
 東北地方整備局釜石港湾事務所は、こうした被災した各港湾施設の復旧工事を、同時並行で進めている。
 「直轄工事の事業エリアは25施設にも及びます。このうち3施設は岩手県からの代行で事業を進めています。すでに産業活動が再開されていますので、地元の方々の要望を聞きながら、順次防波堤や岸壁などの再整備を進めています」(釜石港湾事務所の畑田武見副所長)。
 復旧工事の状況を地区別に見ていくと、竜神崎地区の竜神崎防波堤は2012年7月から倒壊したケーソンの撤去作業を開始し、2012年11月に作業を終了した。ケーソンの撤去工事では、倒壊したケーソンを砕岩棒で砕き、海底に沈んだコンクリート殻などを収集し、陸上で分別後、新設ケーソンの中詰め材として再利用した。
 この撤去作業と並行して2012年9月にはケーソン2函、翌10月にもケーソン2函の計4函を現地に新たに据え付けた。ケーソンは標準サイズで長さ10m、幅9〜10.5m、高さ15mの大きさとなる。2012年度内に基礎マウンドも完成し、残る5函の据え付けも終える予定だ。引き続きケーソンの上部工工事などを進める計画だ。

大きな被害を受けた宮古港

倒壊したケーソンを砕岩棒で砕き除去する

宮古港の災害復旧実施箇所

断面とマウンドを広げ粘り強い構造に

 防波堤の復旧工事では、原型復旧を原則としながらも、粘り強い構造の工夫が行われている。出崎防波堤ではケーソンの断面を大きくするとともに、基礎マウンドも広げている。
 ただ、ケーソンの据え付けが「夏季からの漁に支障が出ないように終えて欲しい」という期限付きでの施工を求められたため、マウンドの構築は必要な最低断面だけを施工し、ケーソン据付後に設計断面の規模にマウンド広げるを工事を行っている。

出崎防波堤の断面図

被災前の断面図

復旧断面図

ケーソンの据付をサンマ漁に間に合わす
 出崎防波堤は、「鍬ヶ崎地区港内の静穏度を高めるために地元から早期復旧の要望が強く、宮古港で最初に着手した工事箇所だ」(畑田副所長)。特に防波堤の復旧は、地元のサンマ漁にも影響するため、早期の完全復旧が求められていた。工事は標準部、ハネ部とも釜石港湾事務所が担当し、うち標準部については岩手県の代行事業として進めている。
 まず藤原地区の陸上にて2011年末からケーソンの製作を開始。2012年3月には18函の製作を完了した。ケーソンは3タイプあり、標準タイプで長さ12.5m、幅6.9m、高さ9.5mの大きさで、重さは約660トンにも及ぶ。2012年4月には被災したケーソンの撤去作業に着手。標準部14函、ハネ部2函の計16函を砕岩棒で砕きながら撤去を進めた。標準部のケーソンは海面から上部も見えない状態のため、ナローマルチビームで座標を確認しながら慎重に砕いていった。撤去作業は、2012年6月末にほぼ終了した。
 一方、ケーソンの据え付けは、地元から「サンマ漁に支障が出ないように終えてほしい」(畑田副所長)という要望があったため、綿密な施工計画を立て、マウンドの敷き均し作業やケーソンの据え付けが効率よく行われた。
 「ケーソンヤードから起重機船(2,050トン)でケーソンを吊り上げて現地に曳航し、慎重に所定の位置に据え付けました。2012年7月末からケーソン据え付けを開始し、マウンドの敷き均し作業と並行して行うなど、タイトなスケジュールで作業を進めましたが、8月12日に18函すべての据え付けを終ええることができました」(畑田副所長)。
 現在、防波堤のかさ上げや上部工工事を進めている。出崎地区ではこのほか、岸壁やエプロンの打ち換えやかさ上げ工事を実施中で、岸壁を使用しながら順次施工場所を変えて整備を進めている。

わずか17日間に18函のケーソンを据付

神林地区は5函のケーソンを再利用
 藤原地区は、藤原防波堤の堤頭部のケーソン2函が破損したため、フローティングドック(FD)でケーソンを製作中だ。同時に防波堤全体のかさ上げ工事を実施。岸壁やエプロン部についてもかさ上げや打ち換えも行っている。藤原防波堤IIでは、ケーソンの倒壊はなかったものの、先端の基礎部分が洗掘されたため、水中コンクリートを打設し、傾いたケーソンを修復中だ。同時に上部のかさ上げ工事も行っている。
 神林地区の木材港は、北・南防波堤の復旧工事と岸壁のかさ上げ、打ち換え工事を実施中だ。北防波堤の一部は岩手県の代行事業となる。「北・南防波堤を合わせ、大小合わせケーソン33函を製作し、据え付けていきますが、現在出来上がっているのは8函です。神林地区はもともと貯木場だったのですが、今はヨットの練習などレクレーションに使われているため、工事は細心の注意を払って実施しています」(畑田副所長)。
 また、南防波堤の被災ケーソンのうち、5函は再利用した。上部コンクリートや中詰材などを撤去し、ケーソンを再浮上させ、防波堤の基礎マウンド上に仮置きしていたが、2012年末にはこの転用ケーソン5函を含め、13函のケーソンが南防波堤に据え付けられた。木材港では再利用可能なケーソンは転用してコスト縮減を図っている。

ミキサー船2隻を投入し、生コンを供給

工事ヤードの確保と地元との調整がカギに
 釜石港湾事務所は、復旧工事として計画していた工事10件をすべて発注済み。ただ、コンクリートや石材の確保などで、思うように工事が進んでいない現場もある。特に生コンクリートについては宮古地区に既存プラントが2ヵ所しかなく、港湾工事だけでなく、陸上工事も含め慢性的な供給不足に陥っている。
 このため、2012年7月からミキサー船「はまゆう」を導入。10月には「日本海号II」も投入し、2隻体制で生コンクリートの供給を行っている。
 「『はまゆう』は海上のケーソンの上部工などのコンクリート打設を、『日本海号II』は陸上のケーソンやブロック製作などに使っています。2隻のミキサー船の導入で生コン不足はかなり解消されました」(畑田副所長)。ただ、石材などについては手配にかなり苦労しているのが現状だ。さらに、作業ヤード不足も円滑な事業推進のネックになっている。
 「工事のための作業ヤードの確保や、施設を利用しながらの岸壁の復旧工事などは調整が大変です。それだけに地元の方々と綿密な意見調整を行っています。地元の漁業や産業が1日でも早く元気を取り戻せるように、引き続き地元との連携を深めながら早期の港湾施設の完全復旧を進めていきたい」(畑田副所長)という。
 漁港と観光の町「宮古港」の早期の完全復活を期待したい。

竜神崎防波堤

FDでケーソンの製作が進む

神林地区で再利用されるケーソン(2012年12月4日時点)

ミキサー船でケーソン上部工を打設

釜石港の現場と連携して石材を確保

竜神崎地区竜神崎防波堤(災害復旧)築造工事
施工:東洋・本間JV


 竜神崎地区竜神崎防波堤(災害復旧)工事は、倒壊したケーソン11函の撤去と、基礎マウンドの敷き均し、新設ケーソン9函の据え付け、周辺のくぼみの解消などが主な工事内容となる。
 施工を担当する東洋・本間JVの石井英久所長は、震災前に竜神崎防波堤の先端部に新たにケーソン2函を据え付ける工事を担当していた。「2011年3月末までの工期でしたので、東日本大震災時はすでに工事を終え、完成検査待ちの状態でした。今回の災害復旧工事はこの2函は含まれていないのですが、倒壊したケーソンを見た時、改めて津波の力のすごさを感じました」。
 倒壊ケーソンの撤去工事は、2012年7月から開始。砕岩棒で倒壊ケーソンを破砕し、その後海底に沈んだコンクリート塊をグラブバケットで収集。それを陸上で分別処理し、ケーソンの中詰め材に再利用する。「グラブバケットに通常では考えられない亀裂が入るなどしたため、メーカーの担当者を招き24時間体制で修理を進めました」。
 基礎マウンド構築のための石材の確保は苦労した。「現地を測量すると、当初設計よりも多くの石材が必要なことが分かりました。宮古地区には小規模な採石場が4ヵ所しかなく、とても短期間に供給量が賄えるとは思えませんでした。このため、全社を挙げて石材を確保することにしました」。資材不足は新設ケーソンの支給にも遅れが出ており、新設ケーソンの据え付け工事も今後支給され次第、順次据え付けを実施していく方針だ。

石井英久所長(東洋JV)

早出作業で、お盆前に据え付け完了

出崎地区出崎防波堤(災害復旧)築造工事
施工:五洋・みらい・徳倉JV


 出崎地区出崎防波堤(災害復旧)築造工事は、倒壊したケーソン18函の撤去、基礎マウンド工、新設ケーソン18函の据え付けなどが主な工事となる。施工を担当する五洋・みらい・徳倉JVの嶋田健所長は、「倒壊したケーソンの撤去は、ナローマルチビームでケーソン座標を確認し、慎重かつ効率的に破砕、撤去し2012年6月には終了しました」。
 ケーソンの据え付け工事は、短期間での施工を求められたため、綿密な施工計画を立て作業を実施した。「基礎マウンドの構築では、潜水作業員に早出をお願いしました。午前中に潜水作業員による基礎マウンドの均し作業を行い、午後からはガット船で基礎捨石の投入を実施しました。潜水作業員のパーティを増やし、安全対策に注意を払いながら早期の施工に努めました」。
 基礎マウンドは、ケーソンの据え付けを優先させるため、必要最低限の天端幅で施工した。
 2012年7月27日からケーソンの据え付けを実施。「ほぼ毎日1函据え付けを行い、お陰様でお盆前の8月12日には無事すべてのケーソンを据え付けることができました」。
 現在、基礎被覆石の均しと、ケーソンの上部工などの工事を進めている。
 作業員宿舎を建設するなど、工事の円滑化に向けた対策にも取り組んだ。「ミキサー船の活用や石材の優先的な支給などもあり、工事は順調に進んでいます」。工期内にすべての工事を終える予定だ。

嶋田健所長(五洋JV)