PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

Cover Issue  1853(嘉永6)年、米国ペリー提督率いる4隻の黒船が浦賀へ来航。日本開国の地となったことを発端に、横須賀はいまなお異国文化の匂いが漂う港の街として、個性的なイメージをまとっている。これからの横須賀の“まちづくり”は、そんな市民の気持ちをさらに深める方向で進められている。


横須賀港の由来 1865(慶応元)年、徳川幕府がフランスの技師を招いて製鉄所の建設を開始したのが、横須賀港の起源。その後、明治17年に横須賀鎮守府が設立されて以降、昭和期に終戦を迎えるまで、軍港として発展を遂げた。現在も海上自衛隊が総監部・司令部を、米国海軍が基地を置いている。
 昭和23年に貿易港の指定を受け、同26年には港湾法の指定により重要港湾に、さらに国内産業開発上特に重要な港湾(準特定重要港湾)に指定された。
 現在は、自動車輸出用のふ頭として利用される追浜地区、大型船ふ頭・外貨物取扱港の長浦地区、国際貿易の中核港の新港地区、砂利・砂・日用品の荷捌き地と漁業施設が設けられた平成地区を中心に、首都圏南部の経済産業・物流拠点としての役割を担っている。


アクセス [鉄道]長浦地区:JR田浦駅から徒歩5分、新港地区:京浜急行横須賀中央駅から徒歩10分/JR横須賀駅から徒歩20分、平成地区:京浜急行県立大学駅から徒歩15分、久里浜地区:JR・京浜急行久里浜駅からバス10分 [海路]千葉県金谷港間に東京湾フェリー、大分県大在港間にシャトルハイウェイライン


職・住・学・遊をカバーした、新しい海辺のコミュニティ

横須賀新港 平成地区

埋立による市内初の複合開発

 都市生活者にとって、海のそばの暮らしは、ひとつの夢といえる。それを実現させたのが、横須賀の中心市街に隣接する平成地区の約60haを埋立てて作られた『よこすか海辺ニュータウン』。都心への良好なアクセスと、海と緑がおりなすアメニティを共存させており、各地の都市計画のモデルケースとなりそうだ。

 昭和57年に基本構想が発表され、同59年から着工し、平成4年に埋立竣功。横須賀市としては、埋立による初めての複合開発として、企業だけでなく住宅、商業、大学を含めた誘致が行われた。

 企業誘致については、県や市による優遇制度を設け、地上3階建て以上の立体工場を分譲。住宅は街区ごとに大規模マンションを建て、平成10年から15年にかけて販売し、1844戸が完売、現在約5000人が住んでいる。これらの人々が利用するショッピングセンターやホームセンター、カーグッズショップなどが出店し、にぎわいを見せる。また、平成15年には神奈川県立保健福祉大学が開学。最寄りの駅名も「京急安浦」から「県立大学」へ改められた。

 そして、この“まちづくり”の成果を顕著に見ることができるのは、やはり海岸沿いである。週末、平成ふ頭を挟んで北側の『うみかぜ公園』と南側の『海辺つり公園』へ集い、遊び、くつろぐ人々の姿が、よこすか海辺ニュータウンの成功をなによりも雄弁に物語っている。

海辺つり公園
1年を通じて海釣りができるのはもちろん、芝生のイベント広場、東京湾を往き交う船を眺望できる築山広場など、ファミリーで楽しめる。

うみかぜ公園
広大な芝生広場や、バスケットが楽しめるスポーツ広場、噴水や親水護岸があり、まる一日遊べる公園。休日はバーベキュー客で大いににぎわう。

横須賀市港湾部 海辺ニュータウン課 岩沢勝彦 主査


よこすか海辺ニュータウン計画は、東京湾区域の開発としては東京都港区の臨海副都心や横浜市のみなとみらい21と同時期に進められてきました。ともすればバブル崩壊の影響を被る可能性もあったわけですが、現在の事業収支は20億円ほどの黒字になっており、概ね成功したといえるでしょう。特に、住宅販売と商業施設の誘致が当初の計画どおりに推移したことが大きいと思います。(談)

海辺の魅力を活かした景観デザイン

 海沿いの街といえば、椰子の木が思い浮かぶ。海辺ニュータウンを縦断する「よこすか海岸通り」にも椰子が街路樹として植えられており、リゾート地のようなイメージを醸し出しているが、ここではさらに「街づくりデザイン計画」「色彩ガイドライン」の方針のもと、海と緑に調和した景観づくりの取り組みが進められている。

 特に顕著なのが大規模マンションの建ち並ぶ住宅街区だ。白とベージュを基調としたシンプルなデザインの建物は、周辺の自然のなかでいたずらに主張することはないが、海側から眺めると整然と統一された街並みを形作っている。街区を歩けば、週末の海の喧騒からも遮断される、穏やかな生活空間であることが感じられる。

 また、海辺ニュータウン全域にわたって電線は地中を通っており、電柱のない開放的な景観づくりを実現。横須賀の新しい顔となり得る個性的な街並みである。

海辺ニュータウンの色彩ガイドラインに基づいて色調が統一された大型マンション。

横須賀の海を快適に、安全に楽しむために NPO横須賀マリン協会

当会の主な活動は、横須賀の海でプレジャーボートやヨットなどを楽しむ人々が安心して遊ぶための、また、海のイベントが円滑に運営されるためのさまざまなお手伝いです。具体的には海上保安庁認定の安全指導員が中心となって、危険な船に対する注意・指導を行う、ボートパーク
利用者と周辺住民のあいだのルールづくり、2003年から行われている「よこすか開国祭」や大晦日のカウントダウンなどに船を提供するなどの活動です。その他、新聞やポスター配布を通じた広報活動も行っています。さらに、万一の災害時に備え、会員が保有する60隻以上のモーターボートとヨットを、救助や輸送に提供する体制を整えています。私自身、生まれも育ちも横須賀。10代のころから船遊びをしていました。市民の皆さんがもっと海に親しめる機会を作っていきたいと考えています。(長谷川賢理事長談)

深浦湾のボートパークは、現在3基が完成。さらに今年と来年には1基ずつの設置が予定されている。

横須賀マリン協会
長谷川賢 理事長(左) 戸倉紀夫 監査役(右)