PORT REPORT 新みなとまち紀行

PORT REPORT 新みなとまち紀行

 オホーツク海と太平洋、津軽海峡、日本海に囲まれ、海運が盛んな北海道には35を超える港湾が設けられているが、道内の政治経済の中心・札幌市にアクセス良好といえる港は、長らく存在しなかった。札幌から北東へわずか15kmの石狩湾に港の整備がスタートしたのは1973(昭和48)年のことである。
 港湾施設が整備され本格的に稼動しはじめると、同港の利用は急速な勢いで活発化し、物流や環境、エネルギー供給などさまざまな面で、札幌周辺を中心に好影響を生み出している。若い港の可能性が、いま脚光を浴びている。


Port History — 石狩湾新港の歩み
 石狩湾における港の建設は、明治時代から幾度か構想が練られてきたが、自然条件や当時の港湾土木技術の水準などにより、長年にわたって実現には至らなかった。
 昭和に入り、潮流や建設条件などの検討を進めた結果、現在の石狩湾新港の位置が計画地となる。道央圏の物資需要の高まりに対応し、また日本海沿岸地域および北方圏諸国との経済交流の拠点づくりを目的に、1972(昭和47)年8月「石狩湾新港地域開発基本計画」が策定。11月には「石狩湾新港港湾計画」が決定され、翌年、重要港湾の指定を受けて整備工事が開始された。
 東地区から整備が進められ、1982(昭和57)年に東ふ頭木材岸壁の一部が、1988(昭和63)年には中央水路地区花畔(ばんなぐろ)ふ頭岸壁の一部が供用開始となる。
 1994(平成6)年、関税法に基づく指定により開港。税関署が設置、無線検疫港の指定を受ける。1997(平成9)年、韓国釜山港とのあいだに外貿定期コンテナ航路が開設。1998(平成10)年、花畔ふ頭と樽川ふ頭に5バースが供用開始。1999(平成11)年に植物防疫港、翌年には動物検疫港とし順次指定された。2001(平成13)年には花畔ふ頭にガントリークレーンが配備された。
 2003(平成15)年には、石狩湾新港地域が重量物輸送が可能となる港湾物流特区の認定を受け、静脈物流ネットワークの拠点となるリサイクルポートに指定。2005(平成17)年、検疫法による検疫港の指定を受けたことにより、無線検疫のほか臨船検疫も可能となっている。
 2006(平成18)年には西地区に水深−14mの多目的国際ターミナルが供用を開始し、堅調に推移してきた取扱貨物量のさらなる増大が期待されている。


アクセス
[空路]新千歳空港から道央自動車道「千歳I.C.」〜「札幌北I.C.」または「新川I.C.」で一般道へ(所要時間約40分)/丘珠空港から車で10分
[鉄道]地下鉄麻生駅から車で約30分 
[車]札幌市内から約30分


地の利を最大の強みに発展を遂げる札幌圏の港

 「札幌圏の港」とは、石狩湾新港のキャッチフレーズのひとつだ。札幌市は全国の政令指定都市のなかでも数少ない、海に面していない街。その札幌から約15km、車で約30分と、もっとも近い海の玄関口である。同港のまわりは、道央地区へつながる幹線道路が取り囲むように通っており、札幌をはじめ主要都市へアクセスが良好。物流拠点として好適な立地といえる。
 港を核とした総面積3,022haにおよぶ「石狩湾新港地域」は、札幌圏の生産物流基地として開発が進められている。この地域の就業人口約14,000名のうち、札幌市から通っている人が約10,000名。これは石狩市から札幌市へ通う就業者数と同等だ。雇用の面にも、同港の存在が札幌市といかに密接に関わっているかが表れている。
 同港は、ここ10年あまりのあいだに著しく機能を充実させてきた新興港だ。1997(平成9)年、韓国の釜山港とのあいだに定期コンテナ航路が開設。
 2003(平成15)年にはリサイクルポートに指定され、現在、港の周辺区域に32社のリサイクル関連企業が操業。全国から港に運ばれてきたスクラップ等が、各企業で資源として再生され、海外へ運び出されていく。
 今年4月には、同港の急速な発展を象徴する出来事があった。外航商船入港が1994(平成6)年の開港以来4,000隻に到達。13年10ヵ月での到達は、花咲港(根室市)に次いで道内2番目の早さである。

[写真左]金属スクラップなどが積み込まれる東ふ頭 [写真中]中央ふ頭はエネルギー供給基地として活用されている

多様な港湾機能を備えた若い港に寄せられる期待

 石狩湾新港には、掘込みによって静穏度の高い中央水路が整備され、効率的な作業環境を実現する各種設備も整えられたことにより、多様な需要に対応している。
 東ふ頭はリサイクル基地。荷捌地と直結した全面舗装の野積場は、作業効率が高い。スクラップのほか、砂・砂利の取扱いも盛んだ。
 中央ふ頭では、北海道ガス(株)などのエネルギー関連企業が操業。水深−7.5mの危険物専用岸壁を利用して、LPGや灯油、軽油、ガソリンなどの石油製品を受入れ、タンクローリーなどで札幌圏へ供給している。
 花畔ふ頭には、5haを超えるコンテナヤードやガントリークレーンなどが整備され、主にコンテナやセメントが取扱われている。また、港湾サイロとしては道内最大級のセメントサイロが整備され、札幌圏に出荷されている。
 樽川ふ頭は、産業・生活物資を供給する物流基地。水産品や鋼材、輸出入米、石灰石など幅広い貨物が取扱われている。背後地には多くの大型冷凍冷蔵倉庫が操業しており、物流企業を中心とした営業用冷凍冷蔵庫15件と、水産会社の自家用冷凍冷蔵庫8件を合わせた庫腹量は20万tを超え、札幌市内の冷凍冷蔵庫の庫腹規模と肩を並べる。また、冷凍ニシンの通関実績は、2007(平成19)年の調査で13年連続全国一。食料基地としての利用価値が高まっている。
 西ふ頭には、5万t級の大型船舶が入港可能。水深−14m、延長280mの公共岸壁と、木材チップの荷役施設を備えた約12haの荷捌地が整備されている。
 同港の現状と今後の展望について、石狩湾新港管理組合振興部の桑島朋子参事に話を伺った。
 「港湾施設の整備と利用促進が比較的スムーズに進み、近年、その成果が表れてきているようです。道内一の大消費地・札幌に近いことから、消費財等の輸入がとくに好調。輸出は再生資源がありますが、今後さらに広げていけるよう検討したい」(談)
 若い港が秘めるポテンシャルは大きい。札幌や道央へおよぼしている経済効果が、グローバルへ広がることを期待したい。

石狩湾新港管理組合 振興部 桑島 朋子 参事

[写真左]公共上屋が整備されている樽川ふ頭 [写真中左]樽川ふ頭の東側に多数の冷凍冷蔵庫が集積
[写真中右]冷凍海産物の荷役の様子 [写真右]花畔ふ頭のガントリークレーン

石狩で、とれたての地魚を
 東ふ頭では4月から7月上旬にかけて朝市が開催され、時季の地魚を格安で買い求めることができる。また、石狩湾新港は釣り人のあいだで評判のスポットでもある。チカ・サバ・イワシ・カレイ・ニシン・ホッケ・ソイ・アイナメ・コマイ・イカなど種類が多く、雪深い真冬でも釣り人が絶えない。

[写真左・中]東ふ頭で開かれる朝市 [写真右]港は太公望たちの人気のスポットでもある