『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
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製紙業とともに成長した港湾
それぞれの歴史を刻んできた三島港、川之江港だが、製紙業をはじめとする産業の急激な伸展に伴って港湾活動が活発になってくると、両港を一体として運営する必要が生じてきた。昭和45年8月、二つの港は合併して「三島川之江港」として再出発する。国土交通省四国地方整備局松山港湾・空港整備事務所の廣常成治副所長にその経緯をうかがった。「三島川之江港は製紙業とともに発展してきました。チップやパルプ等の原材料を輸入し、製品化して輸出する。紙の需要が高まり、原料や製品の扱量が増加し、入港する船舶が大型化しました。そうした状況から従来よりも広大な港区、高度な港湾機能が求められたんです」。
三島川之江港はその名に二つの港名を冠しているものの、いまや完全に一つの港湾として自立している。港の西側から原材料を供給し、埋立地のほとんどを占める巨大な工場で加工したあと、東側から製品を積み出すという合理的な港湾だ。−15mという四国最大級の岸壁を有し、9万t級の大型チップ船の接岸にも対応できるようになった。さらに近年、港に対する要請が再び高まりつつある。「係留施設の不足による大型船の沖待ち、停船の慢性化と、更にコンテナ貨物の増加によって荷捌きスペースやコンテナヤードが不足しています。そのため金子地区で−14mの岸壁を備えた多目的ターミナルの整備事業を開始したところです」と廣常副所長は話す。また、この港へは大阪港経由で貨物が輸送されることも少なくない。三島川之江港では係留施設が不足していることから、大阪港など大型港湾で荷役が行われ、改めてここまで運ばなければならないという。このような二次輸送をしている現状は、経済性を考慮すると決して望ましい状況ではない。ガントリークレーン等を備えたコンテナふ頭、つまり多目的ターミナルの整備はそうした背景を踏まえたものだ。「輸送ということを考えると、ここは四国の中央に位置していて、とてもいいところだと思うんです。四国4県を縦横に結ぶXハイウェイも整備されましたし、これから物流拠点として当港が果たす役割も高まってきます」(廣常副所長)。
港に対する市民の注目度、期待感も高まりつつある。同事務所の田辺輝夫企画調整課長は「地元の子供たちを対象に見学会を開催しています。ケーソンに落書きをしてもらって、起重機船で吊り上げ、海上で据付ける一連の過程を見てもらったんです。巨大な起重機船や、コンテナ船が行き交う様子などみんなとても興味深かそうに見ていましたね」と話す。三島川之江港の未来を担う子供たちは、目を輝かせながらこのイベントに参加していたという。
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国土交通省四国地方整備局
松山港湾・空港整備事務所
廣常成治副所長
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国土交通省四国地方整備局
松山港湾・空港整備事務所
田辺輝夫企画調整課長
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製紙工場からそびえる煙突は三島川之江港のシンボル
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再生紙の需要が高まり古紙の取扱量も増加している(村松地区)
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金子地区の防潮堤は市民の描いたペイントで飾られている