『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
三河港の港湾整備計画
リサイクルポート三河港の基盤となる国際自動車コンプレックス計画について、愛知県三河港務所建設課の高柳正俊主査にお話をお聞きした。「すでに平成元年頃からメーカーや地域の産業界の間では、自動車リサイクルについての議論がありました。官民一体となった研究会や計画の促進協議会は早い時期から発足していたんです」と語る。国内外のメーカーばかりではなく関連企業の工場が数多く稼動する中、自動車のリサイクルに対する意識は高かったと言う。先行していた国際自動車コンプレックス計画は必然的に三河港におけるリサイクルポートプロジェクトの根幹をなすものとなった。「国内外の自動車企業に対して国際的なビジネスの連携を促すことが計画の目的です。道路と港の一体的な整備や、研究開発にかかわるプロジェクトも計画に含まれています」。これからは計画の主な舞台となる神野地区、大崎地区において車輌の解体やプレス、部品の破砕などを一貫して行える施設や、中古車のオークション会場を整備していく予定だ。
その神野地区には出荷を待つ完成車がひしめいている。見渡す限り整然と並べられた車に反射する光で広大な岸壁全体が輝いているようだ。神野西ふ頭7号岸壁は三河港における自動車流通の拠点。巨大な自動車運搬船が次々と入出港を繰り返し、隣接する三河港豊橋コンテナターミナルではガントリークレーンがひっきりなしに荷役を行っている。その西側には今年の3月に供用が開始されたばかりの8号岸壁がある。船舶の大型化と外貿貨物の取扱いを拡充することを目的として整備された。将来的には8号岸壁をコンテナターミナルとして活用し、7号岸壁を自動車専用のバースとして利用することで機能分担を促し、貿易量の増大を図っていく計画だ。
港湾機能の整備について高柳主査はこう続ける。「三河港周辺には名古屋港をはじめとして良い意味でライバルが多い。自動車の運搬コストや港までのアクセスなど使いやすさといった面でも他港との差別化を図っていく必要があります」。真新しい8号岸壁も1バースが完成したところで背後の埋立、野積場の整備を進めることによってリサイクルポートの構築に貢献することが期待されている。三河港は平成10年のコンテナ航路開設以来、順調に取扱量を伸ばしている。それだけに地元荷主や企業からの期待感も強い。リサイクルポートが本格稼動することによって貨物量がさらに上昇、ひいては利用料などコストの削減にもつながる。自動車に特化したリサイクルポートの推進が三河港のポテンシャルをさらに高いものにしている。
風力選別機をメインに磁気、手作業により何重にも選別が繰り返される
役目を終えた自動車が新たな資源としての道を歩み始める
事前処理された車両が次々とシュレッダー施設に運び込まれる