『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
足摺岬と室戸岬に挟まれ、大きな弧を描く土佐湾のほぼ中央にある須崎港。
リアス式海岸の利点を生かした天然の良港だが、その地形の優位性が時として弱点となり津波の被害にも悩まされてきた。
しかしながら高知県の中核港湾として、また、「セメント」と「木材」の集散拠点として発展してきた須崎港を訪ねた。
(写真:須崎市)
須崎港
「石」と「木」の一大集散基地としてまちを支える国際貿易港
須崎港はリアス式の海岸の地勢をいかした、波穏やかな港だ。角谷岬と山崎鼻によって自然の港口がつくられ、その周辺には太平洋の荒波が直接港内に侵入するのを防御するように島々が点在する。後背地にある標高769mの蟠蛇森から見下ろすと、ここがいかに地理的条件に恵まれた天然の良港であるかが一目瞭然だ。深く内陸に掘り込まれたように港湾が形成されている。後背地はこの蟠蛇森を頂点に200〜300mの山地に囲まれており、海と山の狭間に広がる須崎市は、周辺の9市町村で構成される高幡広域市町村圏の産業文化の中核都市として重要な役割を担っている。
古くは漁業の町、また地域を支える物資の流通拠点として栄えたが、昭和に入り後背地にある石灰岩などの鉱物資源が注目され、その積出し港としての機能が整備されていく。昭和40年に重要港湾に指定され、44年には貿易港として開港し、現在では1万tを超す大型船舶が頻繁に行き交う国際貿易港に発展した。
陸側から海を見渡すと、東側と西側の様子が異なることに気づく。東側は石灰石等を積出すための施設が集中するセメントの港、西側が原木が大量に山積する木材の港といった趣だ。輸出では石灰石などの鉱産品、輸入では原木を主とする林産品が須崎港の主な取り扱い品目だ。石灰石の積出し専用岸壁である大峰地区の後背地には、内陸の田園地帯にまで続く広大なセメント工場が控えている。また、対岸の大間地区ではニュージーランドから輸入された原木が、隣接する木材工業団地で梱包資材として加工され、全国に供給されていく。まさに須崎港はこれら資材の一大集散基地の様相を呈している。
須崎港の西側、港町地区は木材の集散拠点になっている
港町地区の対岸、大峰地区はセメント、石灰岩などの流通基地だ
大峰地区はセメント工場に隣接しており、工場と港はコンベアやクレーンでむすばれている
輸入された原木は隣接する燻蒸工場で殺菌され、またたく間に加工される