『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
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石狩の石炭積出港にその歴史の幕を開け、北海道を代表する産業港のひとつとして目覚ましい発展を遂げてきた室蘭港。
市民活動がこの北の港町に新たな息吹を与えようとしている。
その活動を支える港湾行政がある。
共通する想いは「港に躍動感を取り戻す」という志だ。
人々を迎え入れる港湾整備も整いつつある。
室蘭港に市民が集い始めている。
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室蘭港(写真:北海道開発局 室蘭開発建設部 室蘭港湾事務所)
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室蘭港
文化を発信し、楽しめる港を目指して
内浦湾の東端に位置する室蘭港の語源となったのは「モ・ルエラン」というアイヌ語である。「小さな坂を下ったところ」の意味を持つ言葉だ。周囲を丘陵部に囲まれ、西方向に向かって港口部を開いている。そのため波も穏やかで、1,611haに及ぶ港湾区域の約80%が−9mの水深を有する天然の良港だ。なだらかな山々に抱かれた美しい港、室蘭。いまこの室蘭港で市民の手による港まちづくりが動き出している。
平成10年12月、「特定非営利活動促進法」が施行されてから5年、この法律によって法人格を認められた特定非営利活動法人、則ちNPOの社会的役割は、豊かな市民社会を実現していく上で、ますます高まりつつある。室蘭ではこのNPOと行政が連携しながら港まちづくり、港湾の活性化に積極的に取組んでいる。
明治期の石炭積出港に始まり、鉄鋼、エネルギー産業の隆盛を背景として北海道を代表する工業港へと急成長を遂げた室蘭港。以来、港町室蘭は全国にその名を馳せるようになった。しかし、エネルギー需要の転換、産業構造の変革に伴い、重厚長大型の基幹産業は徐々にその規模を縮小。町全体からも元気が奪われていく。20万人に達するかと思われた人口も今では半減してしまった。
室蘭にかつての躍動感を取り戻す。その志のもと、設立されたのがNPO法人「羅針盤」である。代表を勤める白川晧一さんはこう語る。「40年も前の話ですが、私が高校生の頃の室蘭はエネルギーに満ち溢れた港町でした。鉄鋼、造船と20世紀の花形企業がここに集結。港内も岸壁につけることができず沖待ちしている船がひしめいていました」。しかし時を経るごとに港の様子も変わってきた。物質的な豊かさを追い求めるよりも、心が満たされ、潤いのある港町を創造することができないだろうか。その想いに有志が集い、平成14年6月「羅針盤」は船出の時を迎える。理念として掲げられたのは「港まちづくり」と「人づくり」だ。港と町の活性化を図りながら、将来を担う人材を育成していく。そのために市民、行政、企業、大学とのネットワークを構築し、室蘭の特色を活かしたまちづくりのアイデアを提案、実践している。「ここには港町の風情や、石垣に囲まれた坂道、新鮮な魚が揚がる漁港、ライトアップされる白鳥大橋や測量山、地球岬からの雄大な景観、そして何よりも『港』があります。以前の工業港としてのイメージだけではなく、こうした美しい自然や港町の情緒を活かしながら『文化』を発信し、『エンターテイメント』に満ちた港町を創造したいんです」。これまでに、「ウォーターフロントシアター」と銘打った映画上映会や、ステージショーを披露した「シーサイドフェスタ」など数々のイベントを開催し、大成功を収めてきた。潮風に吹かれながら港で音楽を聞く、映画を鑑賞する。イベントの来場者、そしてスタッフ、それぞれの胸中で港への愛着、まちづくりに対する想いが高まる。この4月には「室蘭港立市民大学」の開校イベントを開催した。セミナーやシンポジウムを定期的に開催する母体となる仮想大学だ。また、「室蘭マリンミュージアム(MMM)計画」では、港の中央ふ頭をアートやパフォーマンスの活動拠点と位置付け、「文化としての建設事業」としてハードの充実も目指している。「まずは港を訪れる人が一人でも多くなることを願っています。イベントや施設の活用を契機に、すぐ近所にこんなにも美しい港があることを少しでも知ってもらいたい」。構想は夢に止まることなく実現に向け歩み続けている。
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港奥部に広がる製鉄工場
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中央ふ頭に整備された緑地
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市街地に程近い中央ふ頭の船溜り
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室蘭港のシンボル、白鳥大橋
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NPO法人「羅針盤」代表 白川晧一さん
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中央ふ頭には7万t級の大型客船も接岸する(写真:室蘭市)