『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
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「協働」するNPOと港湾行政
室蘭港の歴史は開拓使十年計画が始まった1872(明治5)年までに遡る。同年、札幌本府に物資を供給する拠点港として開かれ、内浦湾の対岸にある森港との間に定期航路も開設される。1892(明治25)年、室蘭〜岩見沢間に鉄道が敷設され、内陸の石狩炭田で産出する石炭の積出港として重要な位置を占めるようになった。その後、製鉄、石油精製等の民間企業が次々と進出、物流港の機能に加え北海道における臨海工業港としての基盤を築き上げた。苫小牧港に次いで全道第2位の取扱貨物量を誇り、年間入港船数約8,000隻、利用旅客も30万人を数える。現在でも北海道を代表する拠点港であることに変わりはない。港の最近の動きについて北海道開発局室蘭開発建設部室蘭港湾事務所の魚住聡所長にお話をうかがった。「現在、室蘭港の整備については安全対策、リサイクルポート機能の強化、市民活動の活性化の3つが大きな柱といえます」。安全面では昨年11月、災害時に復旧支援施設となる浮体式防災施設(防災フロート)が西ふ頭に配備された。平成12年の有珠山噴火を受け、防災対策として耐震強化岸壁の整備にも着手。また、港内や後背地から発生する鉄屑や廃プラスチックの再利用拠点として平成14年に総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)の一次指定を受け、関連産業の育成、導入が検討されているという。「崎守多目的国際ターミナルをはじめ、フェリーターミナルや客船バースなどの物流施設も整備されてきました。平成10年の白鳥大橋開通によって主要なふ頭が結ばれ、周辺の臨港道路も整備されつつあります。こうした港湾機能の維持、充実に加え、これからはもっと活気のある港づくりにも力をいれていきます」。港湾行政においても港湾の活性化は大きなテーマだ。ここでもNPO法人「羅針盤」の意義は大きくなってくる。前述したイベントの多くは「羅針盤」が活動拠点とする「3号倉庫」とその周辺を会場として行われる。「倉庫の利用にあたっては建築基準法、消防法などにともなう各種申請が必要です。当開発建設部は当局に対するこれらの調整業務にあたり、規制をクリアすべく協力をしました」。と魚住所長は語る。倉庫周辺の祭りイベントで来場者にビールを楽しんでもらうにしても、ふ頭での飲酒は危険が伴う。そこで開発建設部が『羅針盤』に協力し、イベント当日は職員が保安要員として参加した。民間ならではの機動力、行政だからこそ可能な支援、こうした相互補完によって港まちづくりが前進する。羅針盤の港まちづくり構想を、行政が応援、アドバイスする「協働」のスタイルが整いつつあるという。
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各種イベントやミニコンサートでにぎわいをみせた「シーサイドフェア」(写真:「羅針盤」)
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中央ふ頭の緑地ではフリーマーケットなどのイベントも開催される(写真:室蘭市)
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「シーサイドフェア」ではウェイクボード(水上スキーの一種)も披露された(写真:「羅針盤」)
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ジャーナリストの筑紫哲也氏を招いて行われた「室蘭港立市民大学」の開校式(写真:「羅針盤」)
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フェリーターミナルは生活物資の物流拠点だ
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なだらかな山々に抱かれた室蘭港に白鳥大橋が美しく映える