『海紀行』人とまちを支える港を訪ねて
時代を見据え前進する北東北港湾の雄
秋田港は物流機能のさらなる充実、市民の憩いの場となる港湾空間の創造といった港本来の課題にも積極的に取組んでいる。「『土崎』に寄せる市民の想いは以前からとても強く、秋田港はみんなの誇りなんです」と語るのは秋田県建設交通部港湾空港課の田口秀男副主幹だ。確かに地元では今でも秋田港を土崎と呼び親しむ人は多い。産業、物流の拠点港として、さらに生活空間としての港湾機能の充実を目指した「ポートルネッサンス21」事業計画が昭和63年にスタートし、その一環として平成6年に港湾文化交流施設「ポートタワーセリオン」が、翌年には隣接するドームを備えた港湾緑地「セリオンリスタ」がオープンした。平成8年に開設された秋田マリーナには冬期でも海好きのヨットマンが集う。
「冬が長い秋田では一年中暖かな覆い付のセリオンリスタは子どもたちに人気です。タワーから眺める日本海と夕陽の風景も例えようもなくきれいですよ」と田口副主幹は語る。木材船の大型化に対応する−12mの岸壁の整備や、日本海の荒波から港を護る防波堤の延伸など港湾整備も進行中だ。コンテナ荷物の取扱量も順調に増加してきた。「韓国との定期航路も開設され、10年程前の県の予測を超えてコンテナ物流が盛んになっています。現在では東北地方で2番目の取扱量を誇るまでになりました。平成11年から苫小牧、新潟、敦賀を結ぶ内航フェリーも就航しています」(田口副主幹)。
かつて大河川の河口に開かれた土崎の波止場は、産業、物流、人々の交流拠点となり、また新しいエネルギーを創造する水辺として注目を集めている。秋田港は北東北の港湾の雄として着実に前進を続けている。
取扱いコンテナ量も順調に伸びている(大浜地区)
秋田県建設交通部 港湾空港課 田口秀男 副主幹
秋田港のシンボル、ポートタワーセリオンとセリオンリスタ(本港地区)
本港地区北ふ頭のフェリーターミナル
秋田マリーナは400艇を超えるボートの保管が可能だ(飯島地区)
親水性を重視した港湾空間整備が進む(本港地区)
写真/西山芳一
COLUMN
海風からクリーンなエネルギーを創る風力発電システム
風車は古くからヨーロッパにおいて灌漑や粉引きなど農作業の動力として活用されてきたが、1891年にデンマークにおいて初めて発電設備として活用された。今やデンマークは国内電力需要の17%を風力で賄い、ドイツとともに風力発電先進国となっている。わが国の風力発電設備にも欧州で製作された発電機が多数採用されている。環境汚染物質の排出もないクリーンな発電システムだ。ここで風力発電の構造について概観してみよう。
風力発電にはエネルギー変換率がが高いプロペラ型風車システムが採用される。主として風を受けて回転する翼部分の「ブレード」、ブレードの回転によって発生した動力で発電する発電機やギヤ装置を格納する「ナセル」、これらの装置を支持するタワーや基礎部から構成される。ナセルには風向風速計が取付けられ、これによって風車は常に風上の方向を向くように「ヨー制御」される。また出力をコントロールするピッチ制御機能も搭載されている。発電機内で発生した電気はタワー下部に設置された昇圧トランスで電圧を上げられ送電線を経て供給される。
出力を安定させる調整電源や蓄電池と組合わせた装置の開発や、沿岸部に建設されることが多いことから「塩害」に強い部材の研究が進められている。
(お詫びと訂正)
本誌「マリン・ボイス21」2005年1月号『日本の海紀行/神戸港』の中で神戸空港の開港時期の記述に誤りがありました。現在、整備が進められている同空港の開港は平成17年度内の予定です。お詫びして訂正させていただきます。